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全ての傷が癒えますように

2021年, シングルチャンネルビデオ, 5分5秒, 5.1ch

 

この作品では具体的に語っていない、誰も知り得ない背景として、癌になった私の家族が体の一部を手術で切除するという出来事が昨年ありました。その痛みを間接的に、他人である私が感じたという経験から、本作を制作しました。それは術後の痛々しい見た目から感じた心理的な痛みだと思いますが、私にとっては例えようのない悲しさでした。

実際には人は他人の痛みを感じることはできません。脳の神経を物理的に接続したら感じることができるかもしれませんが、痛みを疑似体験したそれは、解釈できない何か複雑な神経伝達が起こっているようにも感じました。

映像内の白い物体がまわったり倒れたりしているのを見ている間に、時間や傷が溶けてなくなるように、誰かの身体的なあるいは精神的な痛みが癒えるようにという思いをこめました。

都美セレクショングループ展「暗くなるまで待っていて」(2021年)展示風景(会場:東京都美術館、撮影:間庭裕基)

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